私たちが目指している社会|多様な価値が、ともに生きるということ

この8月は、「プラクトが大切にしている支援の考え方」をテーマに、支援の順番、アセスメント、企業支援、定着支援、社会参加などについてお伝えしてきました。

どの記事にも共通していたのは、**「一人ひとり違う」**という考え方です。

支援に決まった順番はありません。
同じ診断名でも、困りごとは違います。
人は環境によっても変わります。
会社にも、それぞれ違う文化があります。

では、なぜ私たちはここまで「違い」を大切にしているのでしょうか。
今回は、その理由についてお話ししたいと思います。

病院を出て、初めて見えたもの

私は精神科の病院で約20年ほど勤務したあと、地域で就労支援に関わるようになりました。
病院では、本当に多くのことを学びました。

  • 病気について
  • 回復について
  • チームで支えることについて
  • 支援の専門性について

どれも今の私にとって、大切な土台です。
精神疾患や発達障害のを持つ方たちを支えるうえで、病院で学んだことは今も大きな財産になっています。

一方で、地域に出てから初めて見えたこともありました。
それは、社会には想像以上に多くの価値観があるということです。

企業には企業の文化があります。
家庭には家庭の価値観があります。
働くことへの考え方も、人それぞれです。
同じ「働く」という言葉でも、その意味は一人ひとり違います。

収入のために働く人もいます。
自分の役割を感じるために働く人もいます。
人とのつながりを持つために働く人もいます。
生活の安定を目指して働く人もいます。

地域で11年間、多くの利用者さん、企業、関係機関と出会う中で、私はその多様さを何度も教えられてきました。
そしてその経験が、今のプラクトの支援のあり方にもつながっています。

「正解」は、一つではありません

就労支援の現場では、
「どちらを選べばいいですか」
「何が正解ですか」
と相談を受けることがあります。

けれど、本当は人生に一つの正解はありません。

一般就労を選ぶ人もいます。
生活訓練から始める人もいます。
B型事業所で自分のペースを大切にする人もいます。
転職を選ぶ人もいます。
少し立ち止まることを選ぶ人もいます。

働き方も、生き方も、本当にさまざまです。

だから私たちは、「これが正解です」と、あらかじめ答えを用意することはしません。
もちろん、支援者として考えをお伝えすることはあります。
けれど最も大切なのは、その人が納得して選べることです。

そして、その選択を自分自身の人生として受け止め、歩んでいけることだと思っています。

支援とは、正解を与えることではなく、その人が自分の人生を選び取っていけるように支えることでもあります。
それは、ときに遠回りに見えるかもしれません。
でも、自分で選んだ道だからこそ、納得しながら進めることがあります。

違う価値観があるから、人は学び合えます

私たちは、「多様性」という言葉をよく耳にする時代に生きています。
でも、多様性とは、みんなが同じ考えになることではありません。

違う考え方があることを認め合えること。
自分とは違う価値観に出会い、「そんな考え方もあるのか」と学び合えること。

それが、本当の意味での多様性ではないでしょうか。

利用者さんも、企業の方も、支援者も、それぞれ違う経験を持ち、違う背景を持ち、違う価値観を持っています。
だからこそ、対話には意味があります。

もし、全員が同じ答えを持っているなら、対話は必要ないのかもしれません。
でも実際には、違う立場だからこそ見えることがあり、違う経験があるからこそ気づけることがあります。

精神疾患や発達障害を持つ方たちへの支援でも、この視点はとても大切です。
本人の感じていること。
家族が心配していること。
企業が悩んでいること。
支援者が見えていること。
それぞれは同じではありません。

だからこそ、どれか一つを正解にするのではなく、違う声を持ち寄りながら、一緒に考えていくことが必要なのだと思います。

プラクトも、多様な声がある場所でありたい

プラクトには、精神保健福祉士、公認心理師、作業療法士、社会福祉士など、さまざまな専門職がいます。
けれど、私たちは資格が違うから価値があるのではありません。

スタッフ一人ひとりが教育背景も、生きてきた時代も、みてきた景色も、育ててくれた人も、臨床の中で出会った人や環境どれひとつとして同じことなく、違う経験をし、違う考え方を持っているからこそ価値がある。
私たちはそう考えています。

スタッフ同士でも、
「私はこう思う」
「私は少し違うかな」
そんな対話が自然にできる組織でありたいと思っています。

違う意見があることは、対立ではありません。
むしろ、その違いがあるからこそ、見えてくることがあります。
一つの見方だけでは見落としてしまうことも、複数の視点があれば、より立体的に理解できることがあります。

そして、その姿勢は利用者さんとの関わりにもつながっています。

  • 違う意見があってもいい
  • 違う価値観があってもいい
  • 違うペースで進んでもいい

その違いを消すのではなく、尊重しながら一緒に考えていく。
そんな場所でありたいと、私たちは思っています。

私たちが目指している社会

私たちが目指しているのは、みんなが同じように働く社会ではありません。
同じ価値観を持つ社会でもありません。

一人ひとりが違うことを前提に、それでも安心して暮らし、働き、支え合える社会。
その人らしい人生を、その人自身が選んでいける社会。

それが、私たちの目指している社会です。

就労支援も。
生活訓練も。
企業支援も。
定着支援も。
社会参加を支えることも。

すべては、その社会につながるための手段だと私たちは考えています。

支援は、誰かを一つの正解に当てはめるためにあるのではありません。
違いを持ったままでも、安心して生きていけるようにするためにあります。
そして、自分らしい生き方や働き方を、自分で選んでいけるように支えるためにあります。

私たちが大切にしたいのは、答えが一つしかない社会ではありません。
一人ひとりが違う価値観を持ちながら、お互いを尊重し、自分らしい人生を歩んでいける社会です。

そのために、私たちは今日も、一人ひとりとの対話を大切にして行きたいと考えています。

次回は、このシリーズの締めくくりとして、
「支援者は答えを持っている人ではない」
というテーマでお話ししたいと思います。