支援者は答えを持っている人ではない|人生の舵を握るのは、あなた自身だから

8月は、「プラクトが大切にしている支援の考え方」をテーマにお届けしてきました。

支援に決まった順番はありません。
アセスメントは、一度きりの評価ではありません。
同じ診断名でも、困りごとは一人ひとり違います。
人は環境によっても変わります。
会社を選ぶことも、働き続けることも、その人らしい人生の一部です。

そして前回は、私たちが目指している社会についてお話ししました。
一人ひとりが違う価値観を持ちながら、それでも安心して暮らし、働き、支え合える社会。
今回は、このシリーズの最後として、「支援者」という存在について考えてみたいと思います。

支援者は、答えを知っている人なのでしょうか

支援者という仕事には、「専門家」というイメージがあります。
そのためか、ときどきこんな言葉をかけていただくことがあります。

  • 先生なら答えを知っていますよね
  • どうすればいいか教えてください
  • 何を選べば正解ですか

たしかに、制度のこと、福祉サービスのこと、精神障害や発達障害についての知識、就労支援の進め方についてはお伝えできます。
利用できる支援制度や、選択肢の整理、就職活動や生活訓練の考え方など、専門職として役立てる知識や経験はあります。

でも、人生そのものの答えは、私たちも持っていません。

どんな仕事を選ぶのか。
どこで暮らすのか。
どんな人との関わりを大切にしたいのか。
どんな人生を送りたいのか。

その答えは、一人ひとり違うからです。
同じ精神障害の診断があっても、望む働き方は違います。
同じ発達障害の特性があっても、安心できる環境や幸せの形は違います。

だから支援者は、「これがあなたの正解です」と言い切る人ではなく、その人にとっての答えを一緒に探していく人でありたいと思っています。

私たちもまた、社会の中を生きる一人です

私は精神科病院を離れ、地域で支援を始めて約11年になります。
その間、利用者さんだけではなく、企業の方、ご家族、学校、行政、地域のさまざまな人たちと出会ってきました。

その中で、私自身が一番学んだことがあります。
それは、社会には本当に多くの価値観があるということです。

病院という一つの文化の中では気づきにくかった考え方。
企業ごとに違う価値観。
家庭ごとに違う幸せの形。
同じ出来事でも、人によってまったく違う受け止め方があります。

たとえば、「働く」という一つの言葉をとっても、その意味は人によって違います。

  • 安定した収入を得るために働く人
  • 誰かの役に立つ実感のために働く人
  • 社会とのつながりを持つために働く人
  • 生活のリズムを整えるために働く人

どれも間違いではありません。
だから私は、以前よりも「これが正解です」と言い切ることができなくなりました。

支援者もまた、社会の中を生きる一人なのです。
特別な場所から人生を見下ろしているのではなく、同じように迷い、考え、学びながら生きています。
だからこそ、一方的に答えを与えるのではなく、対話を大切にする支援でありたいと思っています。

支援とは、答えを渡すことではありません

私たちが大切にしているのは、答えを渡すことよりも、一緒に考えることです。

  • 私はこう思います
  • こういう選択肢もあります
  • こんな見方もできるかもしれません
  • あなたはどう思いますか

そんなふうに対話を重ねながら、その人自身が納得できる選択を一緒に探していく。
それが、プラクトが考える支援の基本です。

選ぶのは、本人です。
良い結果だったとしても。
思い通りにならなかったとしても。
それは、その人自身の人生です。

だからこそ、自分で選ぶことには意味があります。
誰かに決めてもらった道ではなく、「自分で選んだ」と思える道だからこそ、迷ったときにも立ち返ることができます。
納得しながら進んでいける力にもつながります。

支援者の役割は、本人の代わりに決断することではありません。
選択肢を整理し、必要な情報を伝え、その人が自分の言葉で考えられるよう支えること。
そして、迷いながらでも一歩を踏み出せるよう、そっと伴走することです。

ポリフォニーは、利用者さんだけのためではありません

これまでのシリーズでも、プラクトでは「多様な声」を大切にしていることをお伝えしてきました。
プラクトには、精神保健福祉士、公認心理師、看護師、作業療法士、社会福祉士など、さまざまな専門職がいます。

でも、私たちが大切にしているのは、資格の違いそのもの以上に、違う考え方があっていいということです。

スタッフ同士でも、

  • 私はこう思う
  • 私は少し違う視点を持っています
  • こんな見方もできるかもしれません

そんな対話を大切にしています。

一つの正解を探すのではなく、多様な声を持ち寄る。
その中から、新しい気づきが生まれることがあります。

そしてこれは、利用者さんとの関わりでも同じです。
支援者だけが答えを持っているのではありません。
本人の言葉も、ご家族の思いも、企業の声も、大切な一つの視点です。

就労支援でも、生活訓練でも、定着支援でも、本当に必要な支援は一つの視点だけでは見えてきません。
だからこそ、私たちは「誰か一人が正しい」と決めるのではなく、違う声を持ち寄りながら、その人にとってのよりよい道を一緒に考えていきたいと思っています。

人生の舵を握るのは、あなた自身です

支援者は、人生を代わりに歩くことはできません。
決断を代わることもできません。
誰かの人生を、代わりに引き受けることもできません。

でも、一緒に考えることはできます。
迷ったときに立ち止まることもできます。
違う視点を持ち寄ることもできます。
そして、「自分で選んだ」と思えるように、そっと背中を支えることはできます。

私たちが目指しているのは、誰かの人生を導くことではありません。
一人ひとりが、自分自身の人生の舵を握れるよう支えることです。

それが、プラクトが考える支援です。
そして、それは精神障害や発達障害のある方への支援に限らず、誰かの人生に関わるうえで、とても大切な姿勢だと考えています。

支援者は答えを持っている人ではありません。
「私はこう思う」と伝えながら、
「あなたはどう思いますか」と問い続けられる人でありたい。
私たちはこれからも、対話を大切にしながら、一人ひとりがその人らしい人生を歩めるよう支援を続けていきます。