在宅支援の問題は、「在宅」であることなのか

前回の記事では、2026年10月から千葉市で始まる就労系サービス(就労移行支援・就労継続支援A型・B型)の在宅支援に関する新しい運用について紹介しました。在宅支援は週2回まで、同じ事業所での利用は原則1年まで、1日2回の連絡、週1回以上の評価など、これまで以上に具体的な基準が示されています。

その背景には、在宅支援としながら実際には就労に向けた十分な支援が行われていない事例があったことも前回触れました。公費によって提供される障害福祉サービスである以上、不適切なサービスが行われているのであれば適正化される必要があり、この点についてはあまり議論の余地はないように思います。

ただ、今回はその先を少し考えてみたいと思います。在宅支援の問題は、本当に「在宅」であることなのでしょうか。

ルールを守られれば「良い支援」なのか

例えば、在宅支援を利用している人に、支援者が1日2回連絡し、週に一度は支援内容を評価し、月に一度は対面で本人と振り返ったとします。必要な記録も残され、定められた手続きも行われている。制度上求められていることが適切に実施されていることは、とても大切です。

しかし、それだけで「良い支援が行われている」と言えるのでしょうか。

反対に考えると分かりやすいかもしれません。1日2回連絡していても、毎回「今日も頑張りましょう」「今日もお疲れさまでした」で終わっていたら、就労支援として十分かは分かりません。週に一度評価していても、毎週同じことを確認しているだけなら、本人が働くことに近づいているのかは分かりません。

つまり、**「支援を何回行ったか」と「その支援によって何が起きたか」は、別の話です。**制度を適切に運用するためには前者の確認が必要ですが、支援者として本当に見なければならないのは、後者なのではないかと思います。

在宅だからこそ見えるものもある

在宅支援には、通所支援とは違った難しさがあります。直接顔を合わせる機会が少ない分、本人の体調や生活の変化を把握しにくく、困っていても本人から発信されなければ支援者が気づけないこともあります。

一方で、在宅だからこそ見えるものもあります。

  • 決められた時間に仕事を始められるか
  • 自分で作業の進捗を管理できるか
  • 分からないことをメールやチャットで質問できるか
  • 仕事と休憩を自分で切り替えられるか
  • 期限を意識して仕事を進められるか
  • 体調が悪くなったときに自分から相談できるか

これらは、現在の在宅勤務でも実際に必要になる力です。そう考えると、在宅支援は単に「通所できない人が家で訓練をする」というだけのものではありません。本人が将来、在宅勤務やオンラインを活用して働くことを考えているなら、自宅で働くための力を実際の環境で身につけていく機会にもなり得ます。

支援によって「何が変わったのか」

就労支援では「就職した」という結果が成果として分かりやすく、就職者数や就職率は数字で表すことができます。しかし、そこへ至るまでには、数字にはなりにくい多くの変化があります。

  • 朝決まった時間に起きられるようになった
  • 週に数時間なら安定して作業できるようになった
  • 分からないことがあると作業が止まっていた人が、自分から質問できるようになった
  • 体調を崩して突然休むのではなく、早めに相談できるようになった

人によって必要な変化は違います。そして、こうした小さな変化の積み重ねの先に、働くことがあるのだと思います。だからこそ支援者には、「今日、何を支援したのか」だけでなく、「その支援によって本人に何が起きたのか」を見る視点が必要なのではないでしょうか。

「在宅か、通所か」だけでは見えない

今回の見直しでは、利用日数や期間、連絡回数など客観的に確認できる基準が細かく示されました。行政がサービスを適正に運用するために、共通の基準が必要なのは確かです。

一方、支援の良し悪しまで同じ方法で測れるかというと、そう単純ではありません。週5日通所していても本人の目標に近づいていないことはありますし、週2日の在宅支援でも、本人が少しずつ働くための力を身につけていることもあるでしょう。

大切なのは、在宅か通所かという支援の「形」だけを見ることではなく、その人がどこを目指していて、そのために何が変わってきたのかを見ることです。良い在宅支援とは、制度上必要な支援をきちんと行うことに加えて、本人が目指す働き方に向かって意味のある変化が生まれている支援なのではないかと思います。

「通所できるようになること」とは何か

ここまで考えてくると、もう一つ気になることがあります。新しい運用では、在宅支援を利用する場合でも原則として事前に2か月間通所し、開始後も1年以内に通所利用へ切り替えられるよう支援することが示されています。

通勤して働くことを目指している人にとって、定期的に事業所へ通う経験には大きな意味があります。では、将来の働き方が在宅勤務だったらどうでしょう。あるいは、障害や疾病によって外出そのものに大きな困難がある人だったらどうでしょう。

次回は、就労支援に「通所できるようになること」は、本当に必要なのか——少し踏み込んで考えてみたいと思います。