同じ診断名でも困りごとは違う|精神・発達障害の就労支援で大切なアセスメントとは

精神科や就労支援の現場で関わっていると、よく感じることがあります。
それは、同じ診断名でも、困っていることはまったく同じではないということです。

ASDだからこう。
ADHDだからこう。
うつ病だからこう。

そのように一括りにできれば分かりやすいのかもしれません。けれど実際の支援は、そんなに単純ではありません。さらに疾患や障害が併存することもありますのでより複雑になります。
精神疾患や発達障害を持つ方への就労支援では、診断名だけで支援方法や職場での配慮を決めてしまうと、かえって本人に合わない支援になってしまうことがあります。

だからこそ大切になるのが、一人ひとりを丁寧に理解するアセスメントです。

診断名は「説明書」ではありません

診断名は、その人の状態を理解するための大切な手がかりです。
ただし、それはその人をすべて説明してくれる完成した説明書ではありません。

たとえばASDと診断されている方でも、

  • 予定変更が苦手な方
  • 雑談や曖昧な会話に負担を感じる方
  • 音や光など感覚刺激に敏感な方
  • 一般にイメージされる特徴があまり目立たない方

など、実際の困りごとはさまざまです。

ADHDでも同じです。
集中の波に困る方もいれば、段取りや整理が負担になる方もいます。
一方で、興味のある分野では高い集中力や発想力を発揮する方もいます。

つまり、ASD 職場の配慮も、ADHD 職場で必要な支援も、「診断名が同じだから同じ内容になる」とは限らないのです。

障害者雇用における配慮を考えるときも、診断名だけで判断してしまうと、「一般的に必要とされている配慮」を並べるだけになり、本当にその人に必要な支援からずれてしまうことがあります。

困りごとだけを見ると、支援はずれてしまいます

就労支援で特に大切なのは、目の前に見えている困りごとを、そのまま原因だと考えないことです。

たとえば、「遅刻が多い」という状況があったとします。
このとき、表面的に見れば、

「時間管理が苦手なのだろう」
「アラームを増やそう」
「チェックリストを作ろう」

という支援になりやすいかもしれません。

もちろん、それが役立つ場合もあります。
けれど、実際にはその背景に別の要因が隠れていることがあります。

  • 睡眠障害があって朝がつらい
  • 薬の影響で起きづらい
  • 出勤前の不安が強い
  • 職場の人間関係に緊張している
  • 会社に行くこと自体が怖くなっている

このように見ていくと、遅刻は原因ではなく結果として表れているのかもしれません。

枝葉だけを見て支援を組み立てると、工夫の方向がずれてしまいます。
本来必要なのは、「遅刻を減らすためのテクニック」ではなく、その背景にある負担や不安を理解し、本人に合った精神障害 配慮や発達障害 配慮を考えることかもしれません。

だからアセスメントは、困りごとの表面を確認するだけでは不十分です。
その困りごとが、どんな状況で、どんな背景から生まれているのかまで見ていく必要があります。

強みもまた、人によってまったく違います

就労支援では、困りごとばかりに目が向きがちです。
けれど、同じ診断名でも違うのは困りごとだけではありません。
強みや得意なことも、一人ひとり大きく異なります。

たとえば、同じ発達障害の診断がある方でも、

  • 一つのことに深く集中できる方
  • 発想が豊かでアイデアを出すのが得意な方
  • 正確さや手順の再現性が高い方
  • 小さな変化によく気づける方
  • 人とのやりとりを丁寧に積み重ねられる方

など、強みの出方はさまざまです。

そのため、合う仕事も自然と変わってきます。
細かな確認作業が向いている方もいれば、変化の少ない環境で力を発揮する方もいます。
逆に、自由度が高い仕事で能力を発揮する方もいます。

障害者雇用 配慮を考えるうえでも、困りごとだけでなく、どんな環境で力を出しやすいのかを見ることが重要です。
配慮とは、単に苦手を補うことだけではありません。
その人の強みが働きやすい形で発揮されるよう、環境や関わり方を調整することでもあります。

だからアセスメントは終わりません

前回の記事でも触れたように、アセスメントは一度行って終わるものではありません。
なぜなら、その人への理解は、関わりの中で少しずつ更新されていくからです。

最初は「人前で話すのが苦手」と見えていた方が、慣れた場面では安心して発言できることがあります。
「集中が続かない」と思われていた方が、仕事内容によっては高い集中力を発揮することもあります。
就職前には必要だった配慮が、働き始めてからは別の形に変わることもあります。

つまり、理解が更新されれば、必要な配慮も変わります。
働き方も変わります。
支援方法も変わります。

就労支援におけるアセスメントとは、診断名を起点にしながらも、そこに固定されず、実際の生活や仕事の場面を通して「その人らしさ」を見続けることです。

私たちは、診断名ではなく、その人を見て支援を考えます

プラクトでは、診断名を見て支援の内容を決めることはしません。
ASDだからこの支援。
ADHDだからこの配慮。
精神障害だからこの働き方。
そのように決めつけるのではなく、その人自身を見て支援を考えることを大切にしています。

診断名は、理解のための大切なスタート地点です。
けれど、それはゴールではありません。

本当に必要なのは、その人がどんな場面で困り、どんな環境で力を発揮し、どんな配慮があると働きやすくなるのかを、丁寧に見ていくことです。
精神障害 配慮も、発達障害 配慮も、正解が一つあるわけではありません。
だからこそ、就労支援ではアセスメントが欠かせません。

私たちはこれからも、診断名に人を当てはめるのではなく、その人に合った支援と配慮を一緒に考えていきたいと思っています。