就労移行支援ですぐ就職活動を始めてもいい?|支援に決まった順番はありません
「就労支援を利用したら、まずは生活リズムを整えて、訓練をして、それから就職活動を始めるのでしょうか」
就労移行支援や生活訓練について説明していると、このような質問をいただくことがあります。
たしかに、生活を整えるところから始め、少しずつ通所日数を増やし、就職活動へ進んでいく方もいます。
一方で、すでに働く準備が整っていて、利用開始の翌日から求人を探し、翌週には就職している方もいます。
どちらが正しい、ということではありません。
なぜなら、就労移行支援や就労支援には、全員共通の決まった順番があるわけではないからです。
就職までの道筋は、一人ひとり違います
就職を目指すまでの状況は、人によって大きく異なります。
たとえば、次のような違いがあります。
- まずは体調や生活リズムを整えることから始めたい方
- 外に出ることや、人と一緒に過ごすことに慣れる必要がある方
- 自分に合う仕事が分からず、職種理解から始めたい方
- 働く力は十分にあり、応募先探しや職場との調整を必要としている方
同じ就労支援を利用する場合でも、必要としている支援の内容はまったく同じではありません。
そのためプラクトでは、「まずこれをして、次にこれをする」という一律のコースに、その人を当てはめることはしていません。
就職活動から始める方もいれば、生活訓練から始める方もいる。
企業見学や職場実習を重ねる方もいれば、すぐ就職に向けて応募へ進む方もいます。
また、就職そのものよりも、就職後に働き続けるための定着支援を中心に必要としている方もいます。
制度上必要な手続きや受給者証などの条件はありますが、支援の中身まで制度の順番に合わせる必要はありません。
私たちが大切にしているのは、**「今、その人に何が必要か」**という視点です。
早く就職することも、時間をかけることも目的ではありません
支援に時間をかければ、それだけ丁寧な支援になるとは限りません。
すでに就職する準備が整っている方に対して、必要のない訓練を長く続けることは、本人の希望やタイミングを逃してしまう可能性があります。
反対に、体調や生活が不安定な状態で就職を急げば、働き始めたあとに大きな負担が生じることもあります。
つまり、
- すぐ就職することが正解とは限らない
- ゆっくり進むことが正解とも限らない
ということです。
大切なのは、その人にとって必要な速度で進むことです。
私たちは、利用期間の長さやプログラムの消化を、支援の成果とは考えていません。
必要な支援を、必要なタイミングで届けること。
そして、状況が変化したときには、支援の内容や進み方も柔軟に変えていくこと。
そうした動的な就労支援を大切にしています。
「今、何が必要か」は一度では分かりません
とはいえ、「その人に必要な支援を提供します」と言うだけなら簡単です。
難しいのは、その人に今何が必要なのかを、どう理解するかです。
初回の面談だけで、その人のことがすべて分かるわけではありません。
面談では緊張して話せなかったことが、日々の何気ない会話の中で見えてくることがあります。
たとえば、
- プログラムに参加したとき
- ほかの利用者さんと過ごしたとき
- 企業を見学したとき
- 実際の職場を体験したとき
こうした場面ごとに、強みや困りごとの現れ方は変わります。
そのためプラクトでは、アセスメントを利用開始時に一度だけ行う「判定」とは考えていません。
日々の関わりの中で理解を更新し、その理解に合わせて支援も変えていきます。
アセスメントの解像度は、支援の解像度です
プラクトには、精神保健福祉士、作業療法士、社会福祉士など、精神疾患や発達障害を持つ方の支援に関する資格と経験を持つスタッフがたくさん在籍しています。
それぞれの専門性や経験によって、見えるものは少しずつ異なります。
あるスタッフには生活上の課題が見え、別のスタッフには不安の背景が見える。
働く場面を通して強みが見つかることもあれば、本人の言葉から、周囲が見落としていた希望に気づくこともあります。
一つの見方だけでその人を決めるのではなく、複数の視点を持ち寄りながら理解していく。
私たちは、こうしたポリフォニック(多声的)なアセスメントを大切にしています。
その人への理解が粗ければ、必要のない訓練を勧めてしまったり、本当に必要な支援を見落としてしまったりします。
理解の解像度が上がれば、今必要なことと、今は必要でないことを分けて考えられるようになります。
その結果、支援する側の考えを押しつけるのではなく、本人の希望や状況に合った支援へ、切れ目なくつないでいくことができます。
支援に人を合わせるのではなく、人に支援を合わせる
生活訓練から就労移行支援へ進むことが合っている方もいます。
利用を始めてすぐ就職活動へ進むことが合っている方もいます。
就職後の定着支援を中心に必要としている方もいます。
大切なのは、あらかじめ用意された支援の順番に人を合わせることではありません。
その人を理解し、その時々に必要な就労支援を組み立てていくことです。
就職を急ぐ人も、急がない人もいます。
途中で立ち止まる人も、予定より早く次へ進む人もいます。
支援に決まった順番はありません。
だからこそ私たちは、一人ひとりの変化を見ながら、支援そのものも柔軟に変化させていきたいと考えています。
次回は、今回触れた「アセスメント」について、もう少し詳しく取り上げます。
アセスメントは、誰かを評価し、できる・できないを決めるためのものではありません。
プラクトが考えるアセスメントとは、その人への理解を、日々の関わりの中で更新し続けていくことです。