障害者雇用で支援機関は何をする?企業支援の役割とできること・できないこと
企業の方から、
「障害者雇用において、支援機関はどこまで関わってくれるのでしょうか」
という質問をいただくことがあります。
この問いは、とても大切です。
なぜなら、支援機関にできることとできないことを整理しておくことが、本人にとっても企業にとっても、よりよい関係づくりにつながるからです。
私たちは、障害者雇用における企業支援を行っています。
ただし、それは企業の代わりに人材管理をするという意味ではありません。
また、本人の代わりに働いたり、本人の意思決定を引き受けたりすることでもありません。
支援機関の役割は、企業か本人のどちらか一方の代わりになることではなく、働き続けられる関係を支えることにあります。
支援機関と企業、それぞれの役割は違います
まず整理しておきたいのは、支援機関と企業では、そもそも立場が異なるということです。
支援機関が支援の契約を結んでいる相手は、利用者さん本人です。
一方で、雇用契約を結んでいるのは、企業と本人です。
この二つは似ているようで、まったく違います。
そのため、支援機関は企業の人事担当者の代わりにはなれません。
勤怠管理や業務指示、評価、配置、雇用上の判断などは、企業と本人が雇用関係の中で話し合いながら進めていくものです。
また、支援機関は本人の代わりに働くこともできません。
困りごとをすべて先回りして解決することや、本人が伝えるべきことを完全に肩代わりすることも、本来の役割ではありません。
つまり、障害者雇用における支援機関は、企業の外側から関わる立場であり、雇用そのものを代行する存在ではないのです。
それでも、支援機関にできることがあります
では、障害者雇用で支援機関は何をするのか。
答えは、「何もしない」ではもちろんありません。
たとえば、入社して間もない時期には、本人も企業も手探りになりやすいものです。
- 仕事の進め方に悩んでいる
- どこまで相談してよいか分からない
- 合理的配慮についてどう伝えればよいか迷っている
- 企業側も、どのように声をかければよいか分からない
こうしたとき、双方が遠慮してしまい、必要な対話が進まないことがあります。
そのような場面で、支援機関は、本人と企業それぞれの思いや状況を整理しながら、安心して話し合えるよう橋渡しをすることがあります。
これが、障害者雇用における企業支援の大切な役割の一つです。
接点が少なくなると、不安は大きくなりやすい
精神障害や発達障害のある方の就労では、体調や環境の変化によって、出勤が不安定になったり、休職に至ったりすることもあります。
特に休職が長くなると、企業としても迷いが大きくなります。
- 今、連絡してよいのだろうか
- どんな言葉をかければ負担にならないだろうか
- 復職に向けて何を確認すればよいのだろうか
一方で、本人の側でも、
- 会社にどう伝えればよいか分からない
- 迷惑をかけている気がして連絡しづらい
- 今の状態をうまく説明できない
と悩んでいることがあります。
こうした場面で接点が少なくなってしまうと、誤解や不安が大きくなりやすくなります。
そのため支援機関が間に入り、双方の気持ちや状況を整理しながら、関係が途切れないよう支援することがあります。
これは、単なる連絡役ではありません。
職場定着や就労定着を見据えながら、対話の糸が切れないよう支えることが、支援機関の重要な役割です。
「困ったら相談できる」が安心につながります
企業支援というと、問題が起きたときだけ必要なものだと思われることがあります。
しかし実際には、問題が起きてからではなく、困ったときに相談できる関係があること自体が大きな安心につながります。
企業にとっては、精神障害や発達障害のある社員への関わり方に迷うことがあります。
本人にとっても、合理的配慮をどう伝えるか、職場での困りごとをどこまで言葉にすればよいか悩むことがあります。
そうしたときに、「必要なら相談できる支援機関がある」と分かっているだけでも、企業も本人も一人で抱え込みにくくなります。
私たちは、すべての答えを持っているわけではありません。
けれど、状況を整理し、何が起きているのかを一緒に見立て、どうすればよいかを一緒に考えることはできます。
企業支援とは、万能な解決策を提示することではなく、対話しやすい土台をつくることでもあります。
合理的配慮を「実際の働き方」に落とし込む支援
障害者雇用では、「合理的配慮」という言葉がよく使われます。
けれど実際には、言葉として知っていても、現場でどう調整すればよいか悩む企業は少なくありません。
たとえば、
- 指示は口頭より文書のほうが伝わりやすい
- 休憩の取り方に一定の配慮が必要
- 体調変化があるときの相談ルートを明確にしたい
- 業務量や優先順位の整理にサポートが必要
こうしたことは、抽象的な配慮の話だけでは進めにくいものです。
そこで支援機関は、本人の状態や特性、職場の状況をふまえながら、合理的配慮を実際の働き方に落とし込むための整理をお手伝いすることがあります。
ただし、最終的にどのような配慮を行うかは、企業と本人が話し合って決めていくものです。
支援機関が一方的に決めるものではありません。
支援機関の目的は「どちらかの味方」になることではありません
私たちが目指しているのは、企業の味方になることでも、本人の味方になることでもありません。
もちろん、どちらの立場にも耳を傾けます。
しかし本当に支えたいのは、働き続けられる関係そのものです。
本人だけが頑張っても、仕事は続きません。
企業だけが努力しても、うまくいかないことがあります。
必要なのは、お互いに無理のない形で対話できることです。
だから私たちは、必要なときには企業とも対話し、必要なときには本人とも対話します。
その間に立ち、状況を整理し、関係をつなぎ直していく。
それこそが、障害者雇用における支援機関の役割であり、企業支援の大切な意味だと考えています。